係助詞「や」と「動詞+主語・名詞句」の語順は酷似

係助詞は「そ、なむ、や、か」で文末が連体形で終わる。
「こそ」が已然形で終わる。

「ぞ、なむ」が強調文で、「や、か」が疑問文、「こそ」が強調
と教科書に書いてある。

>出典源氏物語 若紫
>「あないみじや。いとあやしきさまを人や見つらむ」
>[訳] まあ大変だこと。ひどく見苦しいさまを人が見てしまっているだろうか。

「人や見つらむ」
=人+や+見+つ+らむ
=人+あり(公理1)+見(用)+つ(終)+らむ(体)
=人+あり+見て+しまった+と思う
=人が見てしまっているだろうか?

※品詞分解
人=名詞
や=係助詞
見=動詞連用形 み-未然 み-連用 みる-終止 みる-連体 みれ-已然 みよ-命令
つ=完了の助動詞、連用形に接続
  て-未然 て-連用 つ-終止 つる-連体 つれ-已然 てよ-命令
らむ=推量の助動詞、終止形に接続
  〇-未然 〇-連用 らむ-終止 らむ-連体 らめ-已然 〇-命令

この形が疑問文になるとのことだ。
「や」は「あり」の娘言素で意味は「あり」、つまり動詞だ。
動詞だが活用を失っているので助詞と呼ばれている。
機能は動詞「あり」だが、見かけは助詞で、まあ体言の類だ。

「人や見つらむ」の疑問文を平叙文に戻すと
=人+見つらむ+や(助詞=体言)
=人が見たと思う+あり

これが疑問文になって「人や見つらむ」になった。
この形は「動詞+主語」のドイツ語、イギリス英語の
決定疑問文に酷似している。

係助詞「や」の文末が連体形なのは、
「や」が活用を失い助詞=体言に感じられたからだ。

だけれども話者は「や=あり」だと知っていた。
「あり」で文を終わらせたけど、
「や=あり」を体言に感じて、「らむ」は連体形にした、と思う。

繰り返しだが、
平叙文で「人+見つらむ+や」=「人+見つらむ+あり」
疑問文にすると「人+や+見つらむ」=「人+あり+見つらむ」

バリエーションとして、下の疑問文があるだろうか?

(0)いとあやしきさまを人 や 見つらむ … 原文
(1)いとあやしきさまを や 人見つらむ
(2)いとあやしき や さまを人見つらむ
(3)いと や あやしきさまを人見つらむ
(4)や いとあやしきさまを人見つらむ
(※)いとあやしきさまを人見つらむ や … 平叙文

(4)の疑問文は特異だけど、
造語原理「動詞+主語=疑問文」からすればあって良い。
探せばありそうな気がする。

「動詞+主語」は疑問文のほかに、強調や感嘆…があった。